ロートペーターの報告にみる「人間」と「動物」
フランツ・カフカの『あるアカデミーへの報告』ー語り手であるロートペーターが猿から人間へ変身するプロセスについて考察する。人間になることは学びや洗練の意味での「進化」とは遠く、報告によれば、むしろ動物化を思わせる「猿真似」や調教が必要であるという。人間になったことは生物的には(たとえば言語を駆使したり前足は足ではなく手に昇格されるなど)満足だけれど、精神的な幸福をもたらしたわけではない。人間化は生き延びるための出口、ひとつのチャンスではあっても、自由への扉ではないのだ。この報告からすると、人間と動物の境界にはあるのは明らかなラインというよりも、グレイゾーンかもしれない。
08/2019
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