待つべきもの

11月6日に注文した本が今日届いた。マールバッハのカフカ展で自分のために買ったカタログで、ベルリンに戻ってきてから「お世話になったあの人にも贈りたい」と思ったのだ。それで主要なWebshopを探してみたら、なぜかどこにも売っていなかった。

仕方がないので、馴染みの本屋まで出掛けた。店主は端末であれこれ調べた果てに首をひねりながら「残念、あなたのほうでLiteratur Archivに直接注文するしかないわね」とメガネの奥から宣言した。いつもどおり取り寄せてもらって翌日引き取りにいけばいいと考えていたわたしは、とつぜん他所者扱いされた気がして心細くなってしまった。

それに店主のいうWebshopはすでにチェックしていたから、余計に落ち込んだ。ここで買った本は一生届かないんじゃないかーそんな匂いしかしない。白を基調にしたWebsiteのつくりはテキストが主役の簡素な仕様で、右上の小さすぎるshopの文字から購入ページへ飛ぶことができる。けれど消費の現場は明らかに「ああ、そういえばこんなところもありますけどね」くらいの存在感なのだ。

フンボルト大学の初めてのマスターゼミで、教授が最初に発した言葉は「文学は死んだ」だった。そんな挨拶を聞くことになるなんて、正直なところ驚いた。あのとき彼がそうして言葉で口にしたことの真意とか実体の、その真ん中にはまだ辿りついていない。けれどことあるごとにエコーして、わたしの耳底に帰ってくる。

それではS教授、たとえばですよ。公式shopで注文した本が3ヶ月も届かないことだってやっぱり、どこかで「文学は死んだ」ことに繋がっているのでしょうか?ードイツ人には曖昧のままではいられないネイチャーがある。だから呆れてもきっと、はっきり答えてくれるだろう。

彼らは基本的にJa oder Nein(ヤー・オダー・ナイン=YesかNoか)なのだ。しかしちょっとスマートな人たちの中には、こんな返しもある。Ja und Nein(ヤー・ウント・ナイン=YesでもありNoでもある)。断固たる明確な態度で、はっきりと、不確かなことを言い放つ。

あの日の注文から3ヶ月、主要なWebshopをもう一度検索してみる。するとベルリン一の大型書店のサイトに「注文可能な本」として掲載があった。気をよくして試しに商品をカートに入れて、支払い直前まで進んでゆく。購入は可能だ。しかし小さな注意表示をクリックしたら、こう書いてあった。

在庫状況不明
商品は現在在庫なし
注文後14日以内に入手可能か状況を確認

Ja und Nein。ほとんどNein。すべてがぼんやりとしていて、2週間待ってわかるのが「状況」だけだなんて。それに、わかるとか、わからないとか、ややこしいことをこれ以上は望まない。わたしは諦めてカートの本を削除した。少なくとも文学には、待つべき忍耐が必要らしい。