二代目とジレンマ

「わたし、永遠にファーストピアスのまま」ーもうだいぶまたすこし大人になって、そうやって言うのも悪くないかと思っていたけど、貫くまでにはずっと未熟。一月のある火曜日、朝食のサンドイッチはいつもと違うツナとアボカドで、わたしの耳たぶからはファーストピアスがいなくなった。新しい月と新しい気分、新しい出来事。新しさの高速列車に飛び乗って、さっそく酔って、左耳たぶの調子が悪い。二代目のピアスを初代がちょっと、嫉妬しただけのことかもしれない。

濃くわかってはいたものの、傷の治りがひどく遅いのである。「わたし、なかなか傷が癒えないタイプなんです」と言ったら、性格的にちぐはぐなことになるけれど、身体的にはそのとおりだから嘘はない。とはいえ英語ならまったく違和感もなくて、ブライアンにはいつだって素直に申告してきた。

あの日、エピソードとしてはクライマックスの「ファーストピアスを1年越しに取り替える」儀式に、ブライアンはいなかった。彼は隣のピアッシング・ルームでこんがらがった長丁場の最中にあったのだ。「まだ処置に25分は掛かりそうなんだ。信頼するチームメイトを紹介させてもらってもいいかな」と言うので、もちろん快諾した。さらに少なくとも25分必要になる処置に比べたら、こちらの作業はあくびみたいなもので、新人のマルタにだってできるだろう。

そして、誰もがそう考えたことが、違う結果になることだってある。マルタ自身も驚いた。彼女はほんとうに意外にも、苦戦した。わたしの二代目が、彼らがいつも扱うガシッと本体を掴んでビュッと抜き差しするようなボディピアスではなくて、至極ふつうの耳用ファッションピアスだったから。小さな付属パーツをつまむなんて、あのブカブカの手袋ではなおさら難しかったと思う。

それにこのスタジオで、「お耳たぶの真ん中ちゃんに、左右お揃いのピアスを飾ってみましょうね」なんて呑気な人には会ったことがない。みなさんもっと真剣で、大袈裟にいえば人生を賭けるくらいの情熱でピアスホールに向き合っている(ように見える)。もしもマルタの差し込み方に何らかの問題があったとしても、いまの左耳たぶ不調の責任は、きっと二代目選びを見誤ったわたしにあるのだ。

だからマルタ、ありがとう。あなたの言ってくれたように、これから「また不調があったりしたら、遠慮せずすぐにスタジオに」行くことにします。「今日はお祝い」と言ってくれたこと、照れたけど嬉しかった。

Eへ、ファーストピアス遂に取り替えたよ。あなたの言ってくれたように、「ピアスホールは育てる」ものなんだね。大切にしてるからって、うまく育つとは限らないんだね。これからもまた教えて。ありがとう。頼りにしてます。