もう5月が終わってしまうけど、冷蔵庫はカラのまま。もうすぐ壊れてひと月になる。この部屋の管理会社も、その管理会社の委託で冷蔵庫を探してくれる電気屋も、いつ聞いても同じことを繰り返す。
「ベストを尽くしてる」
「取り寄せに最低7Werktageは掛かる」
「でも配送が混んでるから、どうなることか」
待っていても音沙汰がなく、それで7営業日経つ前に電話をすると、上のセリフが上からの順番で返ってくる。いつもベストが尽くされていて、またその日から7営業日のカウントが始まる。けれど何しろ配送が混んでいるから、結局どうなるかはわからない。
もしかすると本当は、もう誰も冷蔵庫なんて使ってないのかもしれない。世の中に存在しない失われたモノを欲しがっている、わたしは我儘な阿呆なのだ。あるいは、わたしの冷蔵庫への渇望が本物じゃなくて、それに対する罰かもしれない。
怒っていて、がっかりして、疲れてしまった。どこまで待って、どこまでジタバタすれば本物になるかもわからない。
「今はまだだめだ」と繰り返されるカフカの門番の話を思い出した。どうやら、創作に満ちた奇異ではなかったらしい。あの頃の彼にもきっと、こんなことが普通に起きたのかもしれない。
関係者の皆さんありがとう、一つ気付くことができました。そして明日も、ベルリンは27度。