なでしこ

サッカー日本女子代表がパリ・オリンピック出場を決めた。おめでとう。試合のあとの映像がとらえるのは、解放されて弾ける笑顔と飛び交う歓声。いつも聞いているのはRとわたしの低音ボイスだから、馴染みのないソプラノにちょっとどきっとする。かわいらしいね。なにより、すごいよ。ほとんど娘でもおかしくない選手たちの懸命な姿に「よしよし、うんうん」と頷いたりして、陰ながら応援している。

まだこちらへ遊びに来ていたころの2011年夏、ワールドカップのドイツ大会があった。キャプテンは澤穂希で、「苦しいときは私の背中を見て」と言って優勝を果たした。旧東ベルリンの小さな薄暗いスポーツパブで試合を見ながら、わたしは泣けた。応援の気持ちはたいてい双方向のものらしく、あのときは彼らがエールをくれたのだ。

そうして澤の背中を追いかけて、あとを継いだジェネレーションが2024年のなでしこジャパンである。18歳や20歳の選手たち。画面のこちら側にはママくらいのわたし。いまだにときどき澤の背中を思い出す。見てばかりいて、見せる相手はいるのだろうか?ー無益に考えそうになったところ、背中の痛みに止められた。考えるよりもまず先に、昨日の寝違えを治しなさいよ。そのとおり。元気があったらなんでもできる、はず。

ちなみに「ナデシコ」は日本だけに生息する植物ではないらしい。ナデシコ科ナデシコ属の植物としては、広く北半球の温帯地域にわたって300種ほどが分布する。日本語名から連想する先入観を超えて、国境を超えて、実は世界に仲間のいる生きものなのだ。それってなかなか悪くない。そしてドイツには「ヒゲナデシコ」というのが咲くらしい。それってなかなか・・ベルリンだ。