ハロー、ハロー、サマータイム

小雨が止まない日曜日。体感温度は4℃だけれど、きのう5ヶ月の長い冬を一緒に越したロングダウンをクリーニングへ連れてった。だって今日からサマータイム。夏遠し、春も怪しいくらいだけれど、「サマー」に釣られたベルリナーたちはフライング。短い革ジャン、Tシャツスタイル、それは絶対にまだ早い。

前の日の夜更かしから目覚めたら、世界はほとんどお昼だった。さっそく恒例の時計合わせが待っている。すぐにやる。だらだら眠っていたくせに、起きて目にするのが「本当の時間じゃない」のは困る。どうにも気持ちが悪いのだ。いや、ほんとうは、本当の時間じゃなくて、むしろ嘘なんだけれど、あれ、おかしいな、いずれにせよ、調子が狂ってくる。

うちには、手で巻いたり早送りしないとならない時計が5つある。はじめにバスルームの小さな黒いブラウン時計。次にオーブンのと電話機。このふたつで時間を気にするなんて今後もきっとないとしても、律儀に。それからベッドルームとリビングの高いところに双子のセイコーデジタル時計、キッチンの大きな丸い壁掛け。どれもちょっとだけ、埃を拭いて。

こんな暮らしの割には、時計が多い気がしないでもない。というか、こんな暮らしだから、かもしれない。「東京から連れてきた時計の時刻くらい、合っていてくれませんか」ーもうほんとうは何処にも合ってないし、何も合ってないし、「サマータイム!」の掛け声だけで、勝手に時間が過ぎたことになってしまうんだけれど、だからこそ、せめて。

ふと祖母の家のあちこちに、昔から幾つものカレンダーがあったのを思い出す。本人も存在をすっかり忘れるくらいの、宝探し並みに絶妙な場所にもカレンダーは掛かっていて、遊びに行ったとき代わりにこっそりめくっておいた。わたしの弾けるサマータイムのすべて。今日から、ここから、8時間じゃなくて7時間先の場所で、いつまでも。